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山と共に「在る」生活

五味工務店 長野県諏訪郡富士見町 H様邸

山と共に「在る」生活

物件情報

設計/施工 五味工務店
〒399-0213
長野県諏訪郡富士見町 乙事5812
TEL:0266-62-2872

穏やかな山麓の光景

カサ・マラパルテ、という邸がカプリ海にある。この邸を一躍有名にしたゴダールの映画『軽蔑』の最後、フリッツ・ラングが呟く台詞がある。それは、『Silences』(シランス)=『静かに』

カサ・マラパルテから眺められるのが、アマルフィ海岸、ソレント岬、サイレン島、カプリの輝く太陽と碧の入り混じった海だとしたら、H邸のリビングの窓か ら真正面に展開するのは南アルプス連峰・甲斐駒ケ岳。北アルプスの峻厳さとは異なる、長野と山梨との県境独特の穏やかな山麓の光景である。

左/穏やかな山麓の風景 右/玄関

 


 

こだわりの家の向きと家の形

「いやあ、兎に角ご主人がこだわったのは、家の向きと家の形だったです。」と五味工務店・五味氏が笑う。ご主人は根っからの山男で、リビングにはピッケル が掲げられている。北には北アルプス連峰も控えておりただでさえ登山家には羨ましい環境であるが、この正面の絶景、これは望んでも得られるものではない。 老朽化した家を建て替えると決めた時は、迷わずかつてヤギの棲んでいた物置小屋のあった場所となった。

「その時、防風林を伐らざるを得ませんでした。当時ウチは大家族でしたので(竣工当時、2世帯・8名)五味さんは一番大きく建物面積が取れるコの字の形を した設計をすすめてくれたんですが、伊勢湾台風を経験しているもんですから、谷から吹き上がる風が怖かったんです。」とご主人。

このご主人の意向を受けてH邸の屋根は伏せた大屋根となり、外から見るとまるでもうひとつの甲斐駒ケ岳であるかのような外観である。

左/大屋根 右/正面の絶景

 


 

もうひとつのアルプス

そこで、五味氏は更に山好きのご主人のためにもうひとつのアルプスを屋内に作ることにした。正面玄関から廊下の奥までの壁面に、腰板を加工して、山脈を象ったのである。
「写真を借りてきてねえ、良さそうなのをなぞって写したんですよ。それから左官の人に頼んで、刷毛跡で雲の模様が出ないかって言ってね。それは失敗するから怖い、って嫌がられたんですけど、こう、自分で差しさわりのないような所に見本作ったりしてね。でも、(雲みたいに)見えるといってくれる人と見えないという人で半々です。(笑)」
五味氏が照れくさそうに笑うのを、ご主人はほほえましく眺めている。

上/玄関 下/1F廊下

屋内の山脈

 


 

エアコンは1台もありません

背後に雪山を登るご主人の勇姿の写っている写真が眩しい、と室内を眺めわたしていると、あることに気がついた。そういえば、この部屋に限らず、家中にあの無粋な姿がない。
「エアコンですか?そうです。この家には一台もありません。」

諏訪郡富士見町周辺は、夏こそそれほど気温が上がらないが、冬はマイナス16度前後という極寒の地域である。実際、この日も霙交じりの雨天で外気温は約8度で風が横風が吹き付け、コートを着ていても、じっとしていられない寒さだった。

玄関

リビング&ダイニング

和室

「エアサイクルの良さを理解していただくには、冬に今まで使っていただいたお宅にお連れするのが、一番手っ取り早いです。今だって、外は凄く寒かったのに、エアコンなくても平気でしょ?」と五味氏。「前は、必ず一部屋に一台は石油ファンヒーターを置いていましたからね。北側の裏は昔の家で今はそちらに猫を住ませているので、たまに面倒を見に帰るのですが、寒くて寒くて、ああ今の家は暖かいんだな、と再認識します。」とご主人。とは言いながら、流石に一切の暖房器具がなくて冬の寒さを乗り切ることはできない。

「もう今は亡くなっていないんですが、おじいちゃんが暫く姿が見えなくなって、どこだどこだと探し回ったことがあったんです。そうしたらお手洗いの中で寝ちゃっていたんですね。壁がとても暖かくて、ぽかぽかしたんだそうで(笑)。」と話しながら奥様はくすくす笑った。 床下には、放熱器が置かれていて、もっと寒くなってくるとそれを利用する。放熱器で暖められた熱はエアサイクルならではの動く空気層によって家の隅々まで運ばれて、家中の壁が部屋の中を暖めてくれるのである。これを輻射熱と言うのだそうだ。

その暖かさは、息苦しく、むうっとするような不自然な暖かさではない。リビングに腰掛けていると、足の裏にうっすらと空気が流れているのを感じる。家が呼吸しているのではないかと錯覚するような、ささやかな流れである。

 


 

風と空気の流れ

それは、玄関の吹き抜けを2階の廊下を繋ぐことによって家の中に五味氏がデザインした風の流れと見えない壁の中にエアサイクルがデザインした空気の道筋のコラボレーションの賜物なのだろう。その流れが、家の中にふんだんに使われている様々な無垢材を生かしている。そして、木材が呼吸する家の息遣いに寄り添って刻々と変化していく山の光景を眺めていると、あっという間に時間が流れてしまう。

「本当に飽きないんですよね。うっかり座ると何時間も動けなくなってしまうんです。」
季節の移り変わりと共にあるためには夏は暑く冬は寒さを感じる家でなくてはいけない、と言った高名な建築家がいるが、本来、自然の雨風や太陽の直射日光を避けることで、生物としての生き残り本能が求めたものが「家」である。人が生物として生きていくために環境を享受するための場をあえてわざわざ作りながら、なおかつそこを外と同じ環境とするために、何故巨大なエネルギーをあえて費やす必要があるだろう。


左/2F階段 右/廊下


左/2F子供部屋

 


 

自然の力を享受する

エアサイクルの用いている工法はパッシブ工法である。パッシブとは、機械を使わないで、建築デザインの工夫で自然の力を享受する方法のことだ。山に憧れ、その力を恐れ、その恩恵をそのままに享ける。ありのままに「在る」。

ご主人は最後に長野の水で造られたワインと日本酒をふるまってくださった。
奥様は外出した後、北アルプスの向こうに幅広く低く大きくかかる虹が見えることを、急いで知らせてくださった。H邸はひょっとしたら、ご主人の山へのオマージュとして作られたものかもしれないな、と思う。そこに言葉の要らない、自然とのコミュニケーションする大切さを教えていただいた家だった。

 

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