ページトップへ
  • お問い合わせは0120-13-3196
  • 03-5709-3196

木が腐らず構造体を守る

株式会社 鈴正
[本社] 岩手県盛岡市南仙北2丁目13-17 TEL.019-635-2828(代)
URL http://suzumasa.cc/
一覧に戻る

手づくりの良さを提供して

株式会社 鈴正の代表取締役である鈴木正男氏の机の横には、まだ現役の「それ」がある。「ドラフター?今でも使っていますよ。でも全てではなく、和室などの好きなものを描くのに使っているだけですけどね。」と少し寂し気に鈴木氏は言った。

ドラフターとは、様々な製図定規の役割を果たすアームのついた製図台のことで、現在ではすっかりCADにとって代わられてしまった。お目にかかることのできる場所といえば、工業学校や工学部の構内ぐらいになっているのではないだろうか。

鈴木氏は農家の長男である。そのためか物をつくることが大好きで、昔ながらの草葺屋根・茅葺屋根の家を自分の手でつくりたいという情熱が、今の会社を支える原動力となった。 「少し前の住宅では、ローコスト住宅、ということが重要視されていましたが、果たして住宅において『安い』ということはどういうことでしょう。

家というのは冷蔵庫などの家電製品とは違います。お客さまの家に対する好みや考え方によって、価格はまちまちになるのが普通なのです。

『坪単価』というものによって家の価格が数値化されることで、『安いこと』が良いことであり、自慢であるかのようになってしまいました。しかし、広告で示される坪単価というのは結局は、ハウスメーカーの都合で設定されているものではないでしょうか。最初に安く思えたようなものが、家を作っていく過程でいつの間にか彼らの成功する値段にすり合わせられてしまい、結局は高いものが安いのか、もともと安くて安いのかということがお客さまの目から隠されてしまうようになってしまったように思うのです。」

「もう今ではできないことですが、かつては60人程の職人を住み込みで育てて、社員にしていました。何故なら、お客さまに『少しでも違うな、これは私の家ならではだな。』と思っていただけるもの、すなわち、少しでも多くの『手づくり』のものを提供し続けたかったからです。

その為に必要な『技と匠』は一昼夜にして成るものではありません。

昔の『旦那さんの家』というのは、どれだけ『手』がかかったかが自慢なのであり、その手間に対して対価は支払われてきました。その価値観は今でも私共の会社の中で息づいています。」

長寿命化にこたえる木の家

同社の所在する岩手県では農家が多く、家を建てる敷地面積は広く建坪は60坪以上が平均である。 「ですから、3階建てという家は殆どありません。当然の結果として、コストのかかる鉄筋ではなく、木造住宅が主流になります。」

同社は木造住宅工法の中でも、創業当時から、木造軸組工法にこだわってきた。

「阪神淡路大震災の際に在来工法の良し悪しが騒がれ、ツーバイフォー工法の方が耐震性に優れているという雰囲気になって、当社も大きな影響を受けました。一時はやはりツーバイフォーを取り入れなければならないのかな、とまで悩んだこともあります。

しかし、問題はそこではないのだと感じたのは、リフォームをするためにある合板構造工法のお宅にうかがった時のことです。その家は築後20年弱でしたが、台所のところが、湿気を吸いすぎてダンボール状化してしまっている。合板構造工法は太い柱がなくて箱状の形態を作ることで強度を確保するわけですが、合板がこのようにダンボール化していて、果たしてあの地震がしのげるだろうかと思いました。もちろんどんな建物でも構造内の通気が必要と思います。

昔は『炬燵のやぐら』方式という建て方があります。たとえば岐阜県の白川郷の建物はこのやり方で、1階から2階まで通しで柱や棚をも細かく組み込んでお互いがお互いを支え合うように建てられている。だから、強いんです。古くてもちょっとやそっとのことで倒れません。」

農家は簡単に今住んでいる土地を離れることはできない。だからこそ、2~3世代にわたってその土地が受け継がれていくということは、同社の所在する盛岡市ではめずらしいことではない。

「家は一時期一世代のためのものでした。しかし、最近では確かに若い30代世代の方が家を建てる主流となってきていますが、親御さんと一緒にお住まいになる方も増えてきました。また昔の様に三世代の住む家、というものが求められるようになってきていると感じています。長寿命住宅の復活ですね。」

隠された部分が長持ちの秘訣

そんな木造住宅を愛する鈴木氏がエアサイクルと出会ったのは、昭和59年頃のことである。

「当時はエアサイクルと似たような外断熱商品はありませんでしたから、お客様にお勧めすることはとても難しいことでした。」前例がない上に、壁をたてたり床を張ったりしてしまえば、その仕組みは見えなくなってしまう。ましては、壁の中を流れる空気層がどの様な効果をもたらすかは、出来上がって住んでみない限り分からない。家は数千万円する買い物である。そうやすやすと買い換えられるものでもなく、気軽に試すということなどできない。

「しかし、私にはこれはいいものだという確信がありました。ものを作っている人間だからこそ、内壁に風を通してやることが木材のためにどれだけいいことであるかということが分かっていたからです。」

同社のモデルハウスには、一部壁や床に穴を開けて、エアサイクル独自のうろこ型の断熱材やコラムベースが見える窓を取り付けている。普段は隠されてしまっているもののイメージをお客様に伝えるための工夫である。

「たしかにエアサイクルのコストは割高に感じられることがあるかもしれません。しかし、長年にわたって家の構造体を守ってくれるものですから、それだけでも資産価値は高いものだと思うんです。高級な下着と一緒ですね。見えない部分に気を使う、ということはそれだけでもその人にとってはとても気持ちが良く、大切で重要なものでもあります。」

高級下着は、それこそ数万円数十万円するものも少なくない。素材・デザインの問題もある。しかしながら、特に女性の下着の価格の大半は、その下着の持つ補正機能の優秀さに対して設定されているといっても過言ではない。胸を寄せ上げ、ヒップラインを持ち上げ、ウエストをくびれさせて、美しいボディイラインを描き出す。それが洋服の形を美しく整え、その人のイメージそのものをスタイリッシュに補正する。それは絶対必要不可欠なものかと問われれば、そうではない。見えないものではない故に、それほどの価値を見出せない人も多い。だが、先天的な体型が変更不可能であるように、見えないものだからこそ修正は容易ではなく、全体を決定付けてしまうこともゆるがしがたい事実だ。

鈴木正男
手づくりの良さを提供して 鈴木正男
手づくりの良さを提供して 鈴木正男
長寿命化にこたえる木の家 鈴木正男
長寿命化にこたえる木の家 鈴木正男

風土の知恵を未来へ生かす

車の中から外を眺めていた時、あるものに目が留まった。どの家の周りにも林があって、家を守るようにして繁っている。

この林を『いぐね』という。もともとは家久根、居久根と書くとも言われており、隣の屋敷との境を示すと共に、防風・防雪の役割を果たし、かつては林そのものが建築用材、燃料として活用されることもあった。

その東北独特の風景を形作る屋敷林が全てある方向に向かって植えられている。奥羽山脈のある方向である。奥羽山脈から吹くおろし風から家を守るためだ。

「家を建てる上で、建築基準法にのっとって建てる、ということはもちろん当たり前のことです。けれど、もうひとつ大きく守らなければならないものがあります。それは、風土に合わせた家作りということです。風土というものは、その土地に住んで働いているものでないと分かりません。そこで積み重ねた経験を、今後も家作りに生かしてゆきたいと考えています。」

鈴木氏が若かりし頃は、家を建てるのは定年退職後の大きな楽しみであった。今では殆どの施主様が30代~40代の働き盛りの世代が大きな主流となってきている。「若い方の家庭では奥様が主役で家作りを進めていかれます。そうなると、日ごろ使っている水回りなどの機能を重視する家作りになってきました。もはや、床柱に何を使うかとか、欄間や床の間のある本格的な和室は要らない、と言われるようになりました。時代の流れですね。

これからはその30代から40代の方のニーズに合わせた家作りをしていかねばなりません。」

鈴木氏には、ひとり、息子さんがいらっしゃる。鈴木氏は長い間にわたってこの息子さんとゼネコンからあらゆる地方の家作りの勉強のために一緒に地方を回って過ごしてきた。いつか時代の波が社長の執務机の脇からドラフターを押し流してしまうことになるかもしれない。しかし、その図面の上で幾度となく『手』によって引かれた線の数々は、お客様の家の中に縫いこまれ、未来に受け継がれていく。懐かしの草葺屋根・茅葺屋根への想いと共に。

それが、『手』をこよなく愛する同社のかけがえのない仕事であるのだ。

  • 一覧に戻る
  • 次へ
  • text / Shibata Hiromi
  • photo / Nakashima Satomi